宇宙本を3連打

近所の図書館は、月替わりくらいで入り口そばに特集コーナーを設けている。最近、それが宇宙特集になっていた。はやぶさブームくらいから流行に近いものがあるのだろうか。先日の金冠日食もあったし、『宇宙兄弟』も映画化された。学問的にもここ10年くらいで、太陽系の理解も、宇宙論も、どんどん進歩しているらしい。なるべく日付の新しいやつを選んで新書3冊を読んでみた。

『太陽と地球のふしぎな関係』上出洋介

太陽と地球のふしぎな関係―絶対君主と無力なしもべ (ブルーバックス)

太陽と地球のふしぎな関係―絶対君主と無力なしもべ (ブルーバックス)


サブタイトルによると「絶対君主=太陽」と「無力なしもべ=地球」だそうだ。そりゃ太陽さんと比べられてはかないません、と地球もぼやきそうな例えだが、単に暖かい日光を燦燦と浴びせるだけではない、もっとダイナミックな太陽圏に地球もすっぽり包まれているのだ。NHKスペシャルで放映している『宇宙の渚』と内容的にかぶっている所も多い。

フレア爆発などによりプラズマや高エネルギー粒子が降り注ぐのを、地球は自身の磁気圏でなんとか防いでいる。オーロラはその副産物とも言える。太陽活動が活発化すると、オーロラが出現するにとどまらず、通信がかく乱されたり伝書鳩が迷子になってみたりと人間社会に直接的な影響すら及ぼす。また、太陽活動の変動は気候変動にも影響する。

ひとつ気になるのが、そんな大事な地球磁力の減少傾向。ガウスが200年前にはじめて測定して以来、年0.05%のペースで減りつつあるらしい。メカニズムは不明。このペースのままだと1200年ごろにはゼロになる計算。日本でもオーロラが見れる!と喜んでいる場合ではなく、放射線がビシビシ降り注ぐし、大気を太陽風に持っていかれるしで大変なことになる。もちろん、普通に考えてこのまま減るって事はなさそうだ。N極・S極が入れ替わる現象さえ、地質学的年代スケールではたまに起こっている。しかし、たかが200年間とはいえ足元で急速な変化が生じているのは何となく穏やかでない気がする。

この本について注文をつけるとすると、語句の解説などもっと丁寧にできたのではないかという気がする。また、思いのままに語っているような書きぶりで、繰り返しも多くて少し散漫に感じた。編集次第で改善の余地ありと見た。

『宇宙から学ぶ』毛利衛

宇宙から学ぶ――ユニバソロジのすすめ (岩波新書)

宇宙から学ぶ――ユニバソロジのすすめ (岩波新書)


宇宙飛行士の毛利さんによる本。「生き延びる」や「生命をつなぐ」をキーワードに、著者がユニバソロジと名づけた世界観について語る。宇宙から帰ってくると人生観が変わるという話を聞くが、その一例か。ただ、このユニバソロジ自体はオーソドックスな主張のように思えた。特に突拍子もないような印象はない。全体的に何とも言いがたい本だが、軽く読めるし、宇宙飛行士の体験談として興味深い。

個人的には、次の言葉が印象に残った。

手に手を携えて、みんなで一緒に挑戦をするということはありません。挑戦とはつねに、「個の挑戦」なのです。

『宇宙は本当にひとつなのか』村山斉

宇宙は本当にひとつなのか―最新宇宙論入門 (ブルーバックス)

宇宙は本当にひとつなのか―最新宇宙論入門 (ブルーバックス)


分かりやすく書かれている。それでも宇宙論は難しい。

各章末に質疑応答コーナーがある。理解を助ける有用な方法だと思うが、Q&Aを重ねるといきおい応用的なところに踏み込みがちで、疑問が解けるというよりさらにナゾが深まっていく。それが面白味なのだろうけれど。

3冊に共通するのは、この分野はまだ分からないことだらけで、それが魅力だということ。