ノヴァ第三者責任追及訴訟 判決ロジックの「???」

「ビジネス法務の部屋」さんで、会計処理の違法性有無がポイントになった裁判の判決が取り上げられていた。その判決中に、会計の立場から見てぜんぜんおかしいロジックがあった。裁判の全容は分かっていないのだけれど、そのロジックだけは捨て置けないおかしさだったので書いておきたい。

この裁判は、破綻した英会話学校(ノヴァ社)の元受講生が、ノヴァ社の元役員らを訴えた消費者保護訴訟だそうで、会計処理そのものが主要な争点だったのではない模様。しかし裁判所は、ノヴァ社の当時の決算が「粉飾決算にあたらない」ことを被告側勝訴の根拠としている。

問題となった会計処理は、受講生から中途解約を求められた場合には清算ルールが決められていたにもかかわらず、受講契約当初に一括前払い金の45%を「システム登録料」として売上計上していたもの。詳しい背景が分からないので断定できないが、まったく役務提供も行われていない段階で収益を計上するというのは、さすがに破格の会計処理だろう。

さて、いかにして裁判所はこれを適法と判断したのだろうか?

判決では、ノヴァ社側の会計処理方式の違法性を論じるにあたり、受講生をレッスンするためには、教室を借りたり、講師を探して来る等、いわゆる準備のための費用がかかっていることから、前払い金の45%を収益として初年度の売上に計上することも「費用収益対応原則、実現主義に反して違法である、とまではいえない」と判断しています
 −「ビジネス法務の部屋」より引用 太字は引用者−

え・・・?費用収益対応原則?

ここで費用収益対応原則とは、両者の期間対応のことを指して言っていると思われる。対応する費用と収益とは同じ決算期に計上しなさいよ、と言うことだ。実際にどうやって期間対応させるかだが、普通は「収益の計上タイミングを実現主義によって決定しておいて、然る後に費用の側を収益に対応する期に配分する」というやり方しかないはずである。今回の判決のように、費用の発生タイミングに収益側を合わせに行くなんて、聞いたこともないし、考えたこともない。

なぜ、そうなのか?と問われると、あまりにも当たり前で実は深く考えたこともないので答えづらい。。。うーむ、強いて言えば、実現していない収益は計上させないってことで保守主義と言えるのか。

一応、滅多に見ることもない「企業会計原則」にあたっておく。

一 損益計算書の本質

損益計算書は、企業の経営成績を明らかにするため、一会計期間に属するすべての収益とこれに対応するすべての費用とを記載して経常利益を表示し、これに特別損益に属する項目を加減して当期純利益を表示しなければならない。

ちゃんと収益が基準と読み取れる書きぶりになっていますね。

しかし、裁判所の判決でこんなビックリ判断がでてくるとは、司法と会計との溝というのは侮れないようで。消費者保護訴訟ということで、あまり会計とか強くない裁判官が担当されていたのかもしれませんが。