『ドキュメント 宇宙飛行士選抜試験』大鐘良一、小原健右  リアル宇宙兄弟

ドキュメント 宇宙飛行士選抜試験 (光文社新書)

ドキュメント 宇宙飛行士選抜試験 (光文社新書)

 すこし前に、会社の採用面接で面接官を仰せつかった。こんなことを言ってはいけないかもしれないが、やや気の重い仕事である。人を見る目には自信がない。1年以上いっしょに働いた人間でも、ぜんぜん資質を見抜けていなかったと後から思わされることもある。けれど「気が進まないのでやりません」とも言えないので、むりやり気持ちを奮い立たせて学生諸君と相対してきた。実際お会いして真剣に話をすれば、有望そうな学生さんに出会えたり、ノンビリした人には昔の自分を見たりと、いろいろ思うことはある。すごく疲れるけれど。

 

そんな面接の後に、積読にしていた山から手に取ったのが本書。もともとマンガ『宇宙兄弟』を読んでみて興味を引かれて買った本だ。宇宙飛行士の試験も就職活動とちょっと共通するところがあるかしら、と思ってパラパラとページをめくってみれば、のっけから「宇宙飛行士選抜試験とは”人間力”を徹底的に調べあげる試験」であり、「”就活”の大学生にもヒントがあるはず」ときて、こうも真正面から言われると、半ば予想していたにもかかわらず、なんだか夢や希望も半減した気分になってしまう*1

 

こういう風に、いとも簡単に”人間力”とかに引きつけてしまう語り口はいかにもNHK的であり興醒めするのだが、やはり試験の様子自体にはとても興味がある。たしかに、きびしいメディカルチェックがあったりするのを除けば、採用面接の超手の込んだハイレベル版と言えなくはない。閉鎖環境施設での1週間泊り込みの試験なんてカネと時間さえあれば*2自社の採用でやってみたい会社もあるのでは。

 

『宇宙兄弟』でも一番おもしろかったのはJAXAの閉鎖環境施設の場面だったように思う。実際の試験をしている様子もあそこに描かれていたのとかなり近い感じで、あれはしっかりした取材に基づいていたのだなと改めて感心した。

*1:本屋でもらったカバーを外してみれば、帯にデカデカと”人間力”って書いてありました。

*2:絶対ないけれど