2013年4月に読んだ本

供述によるとペレイラは… (白水Uブックス―海外小説の誘惑)

供述によるとペレイラは… (白水Uブックス―海外小説の誘惑)

ファシズムがひたひたと忍び寄る1938年のポルトガルを舞台にした、中年男ペレイラの物語。淡々とした筆致であるが、政治的なメッセージが強く前面に出ている。

この作品はそれまでのタブッキらしさと違うところが驚きをもって受け入れられたらしいが、タブッキを読むのは初めてなのでその驚きは残念ながら分からない。

控えめながら巧みな描写だし、分かりにくいところもないし、テーマにもすごく共感できる。ストーリー的には直球勝負で熱いところもあって、そういうのも自分の好みのはず。でも、淡々としすぎと言うか、少しはひねりが欲しいというか、こうスッと通り過ぎてしまって引っかかりがない感じ。

ペレイラはいかにも凡庸な中年男という設定なのだろうが、守るべき家族やしがらみもなくて、実は抽象的、思念的な存在みたいに思えるのが感情移入できない原因か。

 

冗長性から見た情報技術―やさしく理解する原理と仕組み (ブルーバックス)

冗長性から見た情報技術―やさしく理解する原理と仕組み (ブルーバックス)

「冗長性を削り取る」「冗長性をつけ加える」「冗長性に意味を持たせる」の3つの視点から情報技術に係るはば広い(DNAなんかも登場)トピックスを解説している。少し詳しい人から見れば初歩的なことなのだろうが、身近な技術でも結構きちんと知らないことが多くて勉強になった。

 

職業としての学問 (岩波文庫)

職業としての学問 (岩波文庫)

職業としての政治 (岩波文庫)

職業としての政治 (岩波文庫)

ウェーバーによる1919年1月の講演。時は第一次大戦直後。ドイツは敗戦、革命、飢餓による混迷の只中にあった。解説によると、ウェーバーは愛国的な人物であったらしいが、この時代背景を考えると本当に気合のこもった講演であっただろうことがよく分かる。講演ゆえに、勢いに任せたような面白さもある。

『職業としての学問』では学問と政策の違いが説かれ、「学問は主観的な価値判断から自由でなければならず、教師は政治的立場を生徒に押し付けてはならない」とされる。一方、この講演自体は学問と言うより政策の口調で語られているように思える。しかし、「学問はそれ自身が知るに値するものかどうかという前提については答えることができない」のだから、学問の意義を語るためには政治の言葉を用いるしかないのかもしれない。

 

もやしもん(12) (イブニングKC)

もやしもん(12) (イブニングKC)

後輩キャラをフィーチャーして、本題(?)の日本酒造りに入っていく。

 

猫とあほんだら

猫とあほんだら

猫エッセイをけっこう書いているようですな。なんだかこう、「常識」をわざわざ解体した上で、それを一からスクラッチで(ちょっとずれた風に)組みなおしていくような、そんな芸風が小説以上にハッキリ出ている。