『解任』マイケル・ウッドフォード 衝撃の告白!っていう感じではないが

- 作者: マイケル・ウッドフォード
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2012/04/12
- メディア: 単行本
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先日のエントリーに続き、オリンパス事件関連本の第二弾。なにか事件についての新事実が明らかにされたりするわけではない。しかし、当事者としてのウッドフォード氏の心の動きや関係者とのやり取りが詳しく描かれるているので、そちらに興味があれば一読の価値はある。
『サムライと愚か者』に比べると、いわば中の人が書いているので、菊川氏はどこまで事態をコントロールできると思っていたのだろうかとか、集団思考に陥ってまともな判断ができないその他経営陣であるとか、オリンパス内部の様子が見どころだ。ただし、ウッドフォード氏を支持・支援した(しかけた)一部社員については、もちろん彼らの不利益になることを恐れてだろうが詳述はされていない。
まだ、いまひとつ分からないことはいくつかある。まずひとつは、なぜオリンパスはウッドフォード解任を撤回しなかったのか、また、なぜ銀行はウッドフォード氏を門前払いしたか?それなりの理由もあるのかもしれないが、単に「和を乱した」「余計なことをしおって」という本音がある方が大きいだろう。さらに言うと、まだまだ不都合な事実があるのでは、とも思わせる。。。
もうひとつは、なぜ、菊川氏はウッドフォード氏を社長にしたか。逃げ切ったと思っていたというのはあるだろうが、本書を読んでウッドフォード氏の考え方を知るほどに腑に落ちない。外人の方が不都合な情報から遮断しやすく、院政を敷くにも好都合と踏んだのか?(弁護士の山口利昭先生は、ウッドフォード氏の「信託の精神」を理解できていなかったのだろうとの見立てを披露されている。たしかに標準的な日本人経営者からすれば縁遠いものだ。オリンパス一筋30年のウッドフォード氏だけに、そこは菊川氏にとって誤算だったのかもしれない。)
オリンパス・グラスルーツを主導した元専務の宮田氏も一文を寄せている。ウッドフォード氏の人となりや、オリンパスでのキャリアに軽く触れられている。