『地球外生命 9の論点』立花隆/佐藤勝彦ほか  わたしたちは何者なのか?

地球外生命 9の論点 (ブルーバックス)

地球外生命 9の論点 (ブルーバックス)


火星運河論争に決着がついて以来、地球外生命はSFの定番ネタでこそあれ科学の対象にはなりにくい時期が続いた。もちろんドレイクらによるSETIの活動などはあったわけだけれど、夢物語か酔狂の類と一般には看做されていた。

ところが最近では地球外生命の存在はにわかにリアリティを持って語られだした。背景には、以下のような事実が明らかになってきていることがある。
・彗星や隕石には生物の素材になりうるような有機物が多く含まれている
系外惑星が次々と見つかっている。特に地球型のあまり大きくない惑星も技術進歩で見つけられるようになった
・地下深くや熱水噴出孔近くなど、極端な環境で生きる生物の様子がだんだん分かってきた
・太陽系内で、液体の水や火山活動など生命が存在しうる環境が見つかってきた

この本では、生物学や天文学などさまざまな分野の研究者が地球外生命関連のトピックスを論じている。こんな本に参加するくらいだから、もちろん地球外生命の可能性について肯定的な人ばかりだ。地球外知的生命はまだまだSFの世界だが、微生物くらいなら本当に太陽系内にもいそうな気がしてくる。

この手の話題に興味を持ってニュースを追いかけたりしている人だと、さほど目新しい話題は多くないかもしれない。それでも、まだまだ発展途上の研究分野での熱気が伝わってきてそれなりに読ませる。逆に、ここ10年くらいの地球外生命や宇宙関連の話題に明るくない人ならば、読めばちょっとした驚きを覚えるんじゃないか。学校で習ったようなこととは随分違ってきているはずだ。この宇宙のなかで生命と言うものが、地球だけの特別な孤立した存在なのか、それとも本当は平凡などこにでもある存在なのか。自分の生きている内には何らかの見通しが立ちそうで楽しみ。

未知なる地底高熱生物圏―生命起源説をぬりかえる
10年以上前に読んだこの本を思い出した。けっこう興奮させる内容だった。また読んでみる価値がありそうだ。