当たり馬券配当事件への考察 競馬編

いろんな意味で競馬ファンには衝撃的なニュースである。

YOMIURI ONLINEより「当たり馬券配当30億円、外れは経費?」

 競馬の馬券配当で得た所得を申告せず、2009年までの3年間に約5億7000万円を脱税したとして、所得税法違反に問われた会社員男性(39)が大阪地裁の公判で無罪を訴えている。

 配当を得るための「必要経費」には膨大な外れ馬券の購入額も含めるべきで、当たり馬券だけから算定したのは不当と主張。国税関係者は「競馬の必要経費が法廷で争われるのは例がない」と審理の成り行きを注視している。

(2012年11月29日14時45分 読売新聞)

衝撃には大きく2つあるわけだが、まずは「なんでそんなに儲かるの?!」という点から。

 男性の弁護人らによると、男性は07〜09年の3年間に計約28億7000万円分の馬券を購入。計約30億1000万円の配当を得ており、利益は約1億4000万円だった。
(略)
 男性の弁護人らによると、男性は会社員としての年収が約800万円。04年頃、競馬専用の口座を開設して約100万円を入金し、競馬予想ソフトを使って、過去の戦績などから勝つ確率の高い馬を選ぶ方法を独自に開発した。馬券の購入にはインターネットを利用し、仕事のない土日に全国の中央競馬のほぼ全レースで馬券を買い、配当収支の黒字が続いていた。

これは3年間トータルの回収率にすると105%。回収率自体はそんなに無茶な数字でないようにも見える。ボク自身はヘボ競馬愛好家なので年間収支は滅多にプラスにならないが、一般的には、浮き沈みの中である程度の期間にわたって回収率105%を記録することは起こりえる。しかし、本件は普通の競馬ファンの回収率105%とは以下の点で重みが違うようだ。

  • 3年間に渡って中央競馬のほぼ全レースを買っている。すなわち試行回数がすごく多い。当然、普通にやっていれば確率論的な回収率*1に強く引っぱられるはず。
  • 元手が100万円しかないのに投資額が大きい。すなわち大きくへこんで資金的に水面下に沈むことなくコンスタントに勝ち続けなければこうならない。ある程度利益がたまれば負けるバッファも生じようが、特に初期では負けていないはず。

もちろん似たようなことを何百人もの人がやっていれば、それらのうち何人かが回収率105%を記録するのに偶然以上の要素はいらない。しかし、ここまで迷いなく競馬に突っ込んでいる人が日本にどれだけいるというのだろうか。漫然と馬券を買うのとは違う「何か」があったのではないかと考えたくもなる。

ひとつ考えられるのはオッズのアノマリーを見つけ出すようなソフトだろう。ふつう勝ち馬を当てるのが競馬であるが、回収率を考えるならば、それぞれの買い目のオッズが割高か割安かを考えるのがストレートな考え方。中央競馬はファン層も厚いのでオッズはそれなりに効率的だと思うのだが、たまに「あれ?馬連の方が、同じ目が入っている枠連よりも倍率が低くなっているぞ」なんて事もあるくらいで、コンピューターを使ってオッズの非効率を見つけ出す可能性は無くは無い気がする。

また、今回の話、予想ソフト云々に聞き覚えがあると思って調べてみたら3年前に類似の事件があった。こちらのブログで紹介されている。

 アフター・パンデミック 「馬券の配当160億円」をどうやって実現したのか - 朝日新聞の補足記事
 http://d.hatena.ne.jp/CaptainTrips/20091009/UPRO_Legendary_Gambler

こちらでは、より詳細に分析手法に触れられており、買い目がやたら多い3連単にアノマリーが潜んでいた模様だ。やりようによっては競馬で儲けられるという所には感心するものの、こういう人らにカモられているかと思うと一般競馬ファンとしてはチト悔しい。*2

日を改めて税金の方もちょっと考えをまとめてみたい。

*1:75%くらいでしたっけ?

*2:この場合の対策は3連単を買わないこと?