なぜ衆院の議席はここまでスイングするようになったんだ?

「そりゃ小選挙区制だからさ」と言われる訳だが、現在の小選挙区比例代表並立制が始まったのは1996年のことであり、今回でもう6回目の選挙。最初の頃って今みたいな一人勝ち現象はなかった記憶があり、小選挙区制であることは一人勝ち現象の必要条件であれど十分条件じゃないのだね、と過去を振り返ってみた。

[衆議院選挙での与党側の得票率&議席獲得率]*1

ソースはウィキペデイア。ここで与党とは選挙後の与党勢力、つまり、その選挙で勝った側を指す。2012年であれば自民党+公明党となる。

まず当たり前だが比例では得票率と議席獲得率はさほど乖離しない。小選挙区に目をやると、これまた当たり前だが勝った側が得票率以上に議席を集める傾向は以前からある。その傾向は2005・2009年で強まって、2012年ではズバ抜けて強い。2012の自公は44%の得票率でもって小選挙区議席の82%を占有している。ここまでの極端な集中はこれまでなかった。

それぞれの選挙ごとに振り返ってみよう。

1996年

自社さ連立政権下での選挙。自民党が復活して、連立パートナーの社民・さきがけはきれいに死亡。これは小選挙区効果も一役買っているだろう。野党第一党の新進党は政権交代を唱えて過半数分を上回る立候補者を立てたが議席は微減。野党第二党の民主党も伸び悩み。*2しかし新進党は小選挙区で得票率28.0%で議席獲得率32.0%と、むしろ小選挙区の恩恵を受けた格好。まだ自民党を割って出たばかりの議員も多く、地盤を分け合っていることが伺われる。

2000年

連立枠組みはいつの間にか自公保になっている。野党も新進党が分裂して勢力図は様変わり。森総理への密室批判や失言問題を受けての選挙で自民は38議席を減らすが、前回総選挙以後に新進党から吸収した議員もいたので、選挙後の勢力同士で比べるとほぼ行って来い。野党第一党となった民主党は32議席を増やしたが小選挙区では得票率27.6%に対して議席率26.7%。小選挙区制は自民党だけを利している。

2003年

民主党が40議席増の177議席を獲得する躍進。これは自民党を食った*3と言うよりか、共産党社民党が大幅に議席を減らした分を民主が取った格好。制度変更後3回目の総選挙にして二大政党制らしくなってきた。小選挙区の議席は自民168に対して民主105と、その後の選挙と比べるとそれなりに拮抗。小選挙区での勢力図を見ると、農村部に強い自民党、都市部に強い民主党という地域別の色分けが見られる。

2005年

郵政選挙。言わずと知れた小泉純一郎の圧勝。前回落とした都市部の小選挙区の多くを自民党が取り返した。比例での勝ちっぷりもこの時の自公が最強。オセロゲームの始まり。

2009年

民主党への政権交代。小選挙区ではオセロがひっくり返る。このときは「自民党もうアカンのか」くらいの感想さえ覚えたのだが。

2012年

小選挙区でもう1回オセロがひっくり返った。日本維新の会が比例第2党に躍り出て小選挙区でも票を食ったため民主は凋落。非自民の票が割れたとの見方についてだが、維新のカラーは安倍自民に近い気もするのでちょっと不思議。しかし、この維新の支持層がここ3回のスイングを作り出している主要因と言うことか。自民の小選挙区での得票率は前回38.7%に対して今回43.0%で、増えてはいるものの言うほど違わない。一方、民主は47.4%から22.8%としっかり減っている。また、維新・みんな・未来が票を分け合って死票が増えた。

やっぱり、この国の政治は自民党を軸に回っているのか。こう度々一斉落選していると地方組織作りも大変だ。自民が既存の組織が強い分だけ有利なのだろう。公明も同じく。

今回選挙後についての雑感

安倍さんは、憲法や国防軍をしばらく封印して経済シフトで安全運転との見方が多い。それはそれで結構なこと。しかし、
1.そっちの右方面の政策の方が安倍さん的には宿願であろうこと
2.民主がマニフェスト通りにやらなかった批判で負けたとの整理がなされていること
以上2点を踏まえると、選挙前に言っていたことをいつまでも封印しておかないと懸念される。議席数では圧勝しているだけに尚更。まあ、言われるとおり来夏参院選の結果次第なのでしょう。安倍さんは参院選で敢えてやりたい政策を争点に持ってくるのか。今後の経済情勢も絡みますが。

*1:定数は小選挙区300、比例180。ただし1996年は比例の定数が200

*2:そう言えば別の政党だったんだよな。

*3:自民は10議席減