2012年に読んだ本
年の締め括りにベスト的なものを選んでみる。
新刊部門
まず(概ね*1)今年の新刊書から。ベスト5くらい選べればよいのだが、今年はアタリが少なかったので数にはこだわらず。期待して買っておいて積読にしている本が多いせいかもしれない。
こうの史代の『ぼおるぺん古事記』。
最終巻の第3巻は2013年出版予定だけれど、もう今年で選んでしまう。神話の世界をマンガでみごとに料理してのけた。ちなみに2012年は、古事記誕生1300周年でした。
クリス・アンダーソンの『MAKERS』と、マーカス・ウォールセンの『バイオパンク』。
別々の本だが2冊合わせ技で選出。本自体の出来としては、両者ともまあ普通だと思うのだが、ITの世界で培われたオープン化の流れが、モノ作りやバイオの世界に波及するかもしれないことを認識させてくれた。
あとはあんまり推せる本がないんだよなあ。マイケル・ルイスの『ブーメラン 欧州から恐慌が返ってくる』も悪くなかったが、前作『世紀の空売り』の期待があっただけに、金融危機にかけた軽い欧州文化批評みたいな仕上がりでは満足できなかった。あと純粋な新刊ではなくて文庫落ちなのだがブルース・チャトウィンの『どうして僕はこんなところに (角川文庫)』は、良い味を出していた。
(2013年1月2日追記)
年末読書で1冊アタリがあった。
塚本勝巳の『ウナギ 大回遊の謎』。コンパクトな中に研究者の半生がギュッと詰まったような本。
新刊以外部門
さて、新刊以外でワタクシがたまたま今年読んだ本から。重量級が多くなった。
ロレンス・ダレルの『アレクサンドリア四重奏』全4巻。
まったく読みやすい本ではないのだが、小説を読む愉しみをじっくり味わえる。巻が変わるごとに隠されていた物事の側面があらわれる様は圧巻。
山本義隆の『磁力と重力の発見』全3巻。
エーコの『フーコーの振り子』を読み、ルネサンス以降の魔術思想に興味を持って手に取ったら、思った以上の収穫だった。とても丁寧に文献をあたった労作。人間の知の営みに敬意を表したくなる。
ジェイムズ・エルロイの『アンダーワールドUSA』上下巻。
好きな作家なので。芸風は変わらず、円熟の感あり。
小山宙哉の『宇宙兄弟』。1巻から19巻まで読んだ。
別に映画化されたからって訳じゃないのだが、改めて読んでみてすごく面白かった。
さあ、年末年始で積読退治をしますか。
*1:前年の10月以降出版なら今年の新刊とみなしてよいかなと