2013年11月に読んだ本

- 作者: 町田康
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2012/07/13
- メディア: 文庫
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「主」(最初は「あるじ」かと思っていたが、やっぱり「しゅ」と読むんでしょうな)という存在が、この波乱万丈の物語を唯一つらぬく背骨になっている。しかし、いったいなんなんだろうなこれは。こんな話をよく次から次へと書けるものだよ。

- 作者: 建築知識編集部
- 出版社/メーカー: エクスナレッジ
- 発売日: 2012/10/01
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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いかにも職人肌らしい人から、そうでもない人まで。でも皆さんにそれぞれの職業倫理があり、仕事への思い入れがあり、歩んできた職業人人生がある。
若い自分にいくつかの仕事を渡り歩いてから、いまの仕事に落ち着いた人が多い。親の伝手で他所の釜の飯を食っていた人もいるが、あてどもなく職を転々としていたような人もいる。時代が違うとは言え、そうした人を吸収する力が社会になければどうにも世知辛くなる。
また、建築というものがいかに多くの種類の職人たちに手がけられて初めて完成するかもよく分かる。職種間のヒエラルキーみたいな話も面白い。このインタビュー集には収められていないが、現場監督という職種の人の声も聞いてみたくなる。現場監督以外に、いわゆる典型的な大工(鋸や鉋で仕事をするような木工の)も本書ではインタビューされていない。鉄骨工や型枠大工は登場するのに偶然だろうか?しかし、現場での「偉い人」として、他の職種の目から語られてはいる。
多くの職種が異口同音に、よい職人は「段取り」を見れば分かると言う。また、周囲への気配りが肝要とも言う。自分の専門だけでなく現場全体のイメージを持っていなければ十分な段取りはできないだろう。様々な職人が働いている現場で、それが周囲への気配りへとつながることも必然。会社員も、まあ一緒だ。

- 作者: 小山宙哉
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2013/10/23
- メディア: コミック
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- 作者: 大鹿靖明
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2013/02/15
- メディア: 文庫
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ところで、いろいろな証言のなかでいちばん「おおっ」と思ったのはこれ。
「菅さんは何でも自分でやりたがる人に見られるのですが、実は意外に他人にゆだねる人です。それで、菅さんから見て良い判断を、その人が主体的にしてくれることと期待する。だからギリギリまで任せきりで。ところが自分のまったく想定外のものを、任された人が持ってくると、菅さんは『違うだろう』とひっくり返してしまう。それで相手を怒らせてしまう。怒って離れていく人は、だいたいこのパターンなんです。」 by下村内閣審議官(当時)
うーん、なんだか分かる。

- 作者: 木下是雄
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 1981/01
- メディア: 新書
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「結論を先にかく」など、著者の主張はだいぶ広くうけいれられるに至っているようだ。

- 作者: 万城目学
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2010/04
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奇をてらったようでいながら物語のつくりがカッチリとしていて悪くない。キャラといい伏線といい成長小説的なストーリーといい紋切り型みたいなところがあるけれど、基本を外さないという感じを受ける。剣道の試合のシーンなんか良かった。

- 作者: 高橋秀実
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2011/04
- メディア: 単行本
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著者が、戦時下であった自分の父母の子供時代や、子供3人に先立たれた先祖について思いを馳せるところはしみじみする。

- 作者: 泉鏡花
- 発売日: 2012/09/27
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内容はともかく、おびただしく振られたルビを括弧書きにくくりだしているのは読みにくい。他にやりようないのかね。

- 作者: ネヴィル・シュート,佐藤龍雄
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2009/04/28
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核戦争後の世界を描くというのはSFとしてはステレオタイプでもあるが、1957年という年代を考えると、本作はそのはしりだったのだろうか。どちらかといえば牧歌的ですらある、取り残されたオーストラリアの光景にはじまり、物語が淡々と進む。たいした仕掛けもないまま終盤へ向けて息の詰まるような感じになってくのは見事。ここまで枯れた味わいのSFというのも珍しい。しかしながら、ある状況を設定してみて、そうした状況のなかで人々がどう行動するかを描く、というのはSFの王道でもある。
メアリの言動がなんだかうちのカミさんを思わせてラストがますます切なくなる。

- 作者: 太宰治,ラディゲ,久坂葉子
- 出版社/メーカー: ポプラ社
- 発売日: 2010/10/13
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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第1集は3人いずれとも夭折した作家。収録作はいずれも独白調。太宰の技巧が光った。